骨董品や古美術品には「贋物」と呼ばれる、いわゆる「偽物」が存在することは有名な話です。この記事をご覧になっている皆さまの中にも「査定の結果、偽物だったら恥ずかしい」「偽物だったら買い取ってもらえないのでは?」と心配している方がいるのではないでしょうか。 事実、偽物は買い取らないというお店の方が圧倒的に多く、処分に困りタダ同然で手放してしまうケースが非常に多いのです。
では果たして本当に偽物を適正価格で買い取ってもらう事はできないのでしょうか?そもそも適正価格とは?
査定依頼の80%は贋物と呼ばれる品々
取り扱う品物を現代作家の作品だけに限定すれば偽物の割合は大きく下がるでしょう。 ですが、いわゆる古美術品や骨董品となると偽物の割合は一気に膨れ上がり、精巧なものから粗雑なものまで多種多様な贋物と対面する事になります。
なぜ沢山の偽物が出回っているのか?
理由は皆さんの想像どおりでしょう。安い原価で模造品を生産し高値で売れれば儲かるからです。何もこれは古美術や骨董業界に限った話ではありません。 近頃はインターネットの普及により直接見かける事は少なくなりましたが、高級ブランド品の財布やバッグ、時計などを定価より安く売っている露天商を見た事があるのではないでしょうか。 仮に同じ素材や技術を使用して工業製品を作るとして、『高く売れるもの』に似せた外見にするだけで利益が跳ね上がるのなら…現代、それに日本だけに限らず、数百年も前から世界中で偽物作りが横行し、大量に生産されていた理由は明白です。
現代ではインターネットを初め情報技術が発達。
一家に一台のパソコンという時代すら過ぎ去り、ビジネスマンや主婦はもちろん、まだ小学生に上がったばかりの甥っ子や、もうじき100歳を迎える祖母までスマートフォンを持つ時代です。 そのため、偽物に関する知識を得ることも容易になりましたし、世界中の人々と簡単に接点を持つことができるようになりました。 情報を見定める力は必要ですが、あらゆる情報を簡単に収集し判断できる現代に『あえて偽物を購入する』人々が居る理由は何でしょう?
「偽物」ではなく「アンティーク」として買い求める人々の存在
古美術や骨董の世界には『偽物だから』と家族や友人から安く譲ってもらったものが、後年に専門家の鑑定を受け『実は本物だった』と発覚してしまうケースがあります。 もちろん非常に稀ではありますが、そういったケースにロマンを求めて購入していく収集家の方々が存在するのも事実です。 では『あえて偽物を購入する』人々とは、上記のようにロマン或いは一攫千金を求める方達が全てなのでしょうか?
骨董品の世界は奥深くおもしろい
例えば桃山時代に作られた志野茶碗があったとします。誰の持ち物であったか、保存状態がどうかといった要素もありますのであくまで参考価格としてですが、1,000万円ほどの値がつく可能性がありますし、即座に博物館に収蔵されるほどの品かもしれません。 では、前述の桃山時代の茶碗によく似せて作られているが、作者は無名の別人。時代は昭和初期に作られた志野茶碗…という条件でいえば?一般的な認識で言えば『偽物』という事になるでしょう。 ただし、そもそも贋作として作る意図はなく、素晴らしい出来栄えの茶碗に似せ作られたものならば新たな価値が生まれます。実際に、人間国宝『荒川豊蔵』の志野茶碗などは昭和初期に作られた写しの作品ですが、 100万円前後で取引される事が多くなっています。
少し変わったケースをご紹介
先ほどご紹介したように、同じ時代の作品ではなくとも時代的な価値が加わることがあります。例えば、江戸中期(約250年前)の特徴を備えた茶碗を模して作られた、明治大正(約100年前)の茶碗であった場合。これは明確に模造品だとすれば、古美術品としては偽物という事になります。しかし、一方で100年前に作られた骨董品としての価値は存在します。 つまり、杓子定規で偽物という言葉で括ってしまう事はできない、本物と遜色ない価値を持つアンティークや、本物でなくとも時代の経過によって付加価値が生じている場合もあるのです。
業界より10年以上早くからネット通販で販路を確保
ここまでに登場した『価値が明確な偽物』であれば、多少買い叩かれることはあっても引き取ってくれる業者は見つかるかもしれません。 ですが、一般的な偽物…特に昭和以降に作られたものとなってくると、冒頭でお話したように買取を拒否される場合がほとんどでしょう。
では諦めるしかないのか?というと、その限りではありません。
世の中には歴史的な価値などない『古美術品風』『骨董品風』な品々を求める人々も存在する
例えば、旅館やここ数年人気になっている外国人向けの民宿、古民家カフェのようなサービスです。これらは古美術品を鑑賞してもらう事を目的としたサービスではなく、あくまで古き良き日本の雰囲気を提供できれば構わないので本物にこだわる必要はありません。何より本物など使用していてはセキュリティの問題が出てきます。 もちろん純粋にアンティークとして使用し楽しみたいという方達も存在します。
偽物でも構わないという人々が存在するのだから商売として成り立つのでは?
多くの業者は偽物を適正価格で買取ろうとしないのは何故? その疑問は半分正しく、半分間違っています。何故なら上記のような人々は圧倒的に少数派だからです。さらに言えば『例え古美術品・骨董品として偽物だとしても、本質は素晴らしい物であればお金を払う』という貴重なお客様への販路を確保できていなければ成り立たないのです。
古美術良はこの問題にいち早く2000年代初頭に解決策を見出しました。
一家に一台パソコンが普及するより古くから、古美術・骨董業界では邪道と見られる時代から、インターネットを通じた売買を行い広告費や人件費を徹底的に圧縮する事に成功しました。そのため旧態依然の方法では非効率とされた、圧倒的少数派の方々との販路を確保する事が可能になったのです。 さらに、販路は日本国内だけに止まらず中国市場にも広げる事に成功しました。 買取る力とは手元に現金を持っているかどうかで決まるものではありません。 販売する力があるからこそ、胸を張って適正価格で買取額を提示することができるのです。
「偽物かもしれない」「笑われる」なんて心配しないで
私たちは古美術・骨董品の専門家であり、決して偽物を取り扱う専門家ではありません。 ですが、仕事の特性上どうしても偽物と向き合う必要があります。 ・どこに持ち込んでも買取ってもらえない ・購入した資金を少しでも回収しいたい ・偽物とはいえ大事にしてくれる人に譲りたい 多様なお客様のニーズに応えるため、全ての品々と真摯に向き合っています。 このような記事を書くと誤解も生まれやすくなりますが『本物』か『偽物』かという問題で躊躇するよりも、まずは私たちにお気軽にご相談ください。 本物であっても、偽物であっても。私たちにしか提示できない本当の適正価格をお伝えいたします。